あまり知られていませんが、東寺を創建したのは弘法大師・空海であり、その空海は東寺しいては真言密教の守護神として稲荷神(ダキニ天)をお祀りしています。
空海は稲荷神を自らの真言宗で崇拝する仏「ダキニ天」と習合させて、日本全国に真言宗を伝えると共に稲荷神(稲荷信仰)も布教しています。
空海は東寺の五重塔やお堂を造営する際、稲荷山の木を伐採するのですが、冒頭でも少しお話ししたように稲荷山にお社を築いて老翁(=稲荷大神)を勧請(招く)し、祀ることで守護神になってもらっています。
一説では、この時に空海が造営したお社が、現在の伏見稲荷大社の前身であるとも云われます。
ちなみに、その時の話がこんなお話です。
稲荷大神と空海
東寺の再建の最中、1人の老人と手をつないだ男女の童が、東寺にいる空海のもとへやってきました。
その老人は「稲の束」を背負い、「杉の葉」を手に持っていたそうです。
空海はその老人を一目見て、稲荷大神(稲荷老翁)とその神使であることが分かりました。
そして、その老人の一行に上述の「柴守長者の家」を宿として提供するなどして丁重にもてなしたそうです。
その後、空海は7日間の祈祷の末、稲荷山に稲荷大神を勧請し、すぐさま稲荷大神をお祀りしたという話です。
ただし、この話には諸説あり、この時の老人は空海が中国(唐)へ渡った際にインドで出会った「お釈迦様」であると言う説もあります。
そしてこの時、空海が稲荷大神をもてなした故事にならい、現代でも神輿に鎮座された稲荷大神が東寺を通るときは、必ず東寺の僧侶がこれを出迎えてお供え物を捧げることが決まりになっています。
なお、この習わしは、例年5月3日の「還幸祭」と言う神事で執り行われています。
実は、空海と稲荷大社とのつながりは他にもあり、なんとぉぅっ!空海の母親が荷田氏の血族であった事実はあまり知られていません。
荷田氏とは、稲荷大社の神官の一族で、稲荷大社を創建した秦氏の末裔とも云われます。
こうなれば新たな伏見稲荷大社創建説が浮上し、その説というのも空海が稲荷大社を創建し、母親の死後、母親と稲荷神(ダキニ天)と習合させて自らの宗派の守護神と定めたのかも知れません。
そして以降、母親の子孫である荷田氏(秦氏)が代々、伏見稲荷大社の神主を務め、守っていくことになるというストーリーです。
御旅所と稲荷祭
伏見稲荷大社の大祭の1つに「稲荷祭」があります。
稲荷祭は、平安時代の850年頃から続く、日本でも最古の部類のお祭りです。
稲荷祭は、大きく3つに分かれており「稲荷神幸祭」と「氏子祭」「稲荷還幸祭」とに分かれます。
そしてこれらのお祭りを総称して「稲荷祭」と称します。
しかし厳密には、5月4日に執り行われる「後宮祭」までもを含めたものが、稲荷祭であると言えます。
伏見稲荷大社「稲荷神幸祭」
「稲荷神幸祭」は、4月の半ば頃の日曜日に行われる稲荷祭の1番最初に行われる祭事です。
伏見稲荷大社の境内で午前11時頃から神様の分霊を5基のお神輿へお遷し巡幸する儀式です。
なお、これらの伏見稲荷大社のお神輿巡幸の起源とは、空海が稲荷神をお祀りする際に、神輿に乗せて巡幸することを誓ったとも云われております。
5基の神輿の種類と氏子地域(巡幸場所)
- 田中社(不動堂)
- 上社(東九条)
- 下社(塩小路・中堂寺)
- 中社(西九条)
- 四大神(八条)
5基の神輿を乗せたトラック数十台が、午後14時に伏見稲荷大社を出発した後、伏見稲荷大社の氏子区域を巡幸して御旅所へ入ります。
その後は奉安殿に一時的に安置されます。
伏見稲荷大社「氏子祭」
そして、稲荷神幸祭から、約2週間ほど経った来る5月2日の午後13時頃になると、準備を終えた5基の神輿が、今度は人の手によって一斉に巡幸へ繰り出します。
まさに、稲荷祭の1番の見所です。
5月2日までの2週間は御旅所にて、お神輿の入念な準備が行われています。
「氏子祭」の巡幸では、伏見稲荷大社の氏子区域を、区域の氏子さんたちの手により巡幸されます。
「京都3大祭」に数えられるだけあって、大迫力のお祭りです。
京都の3大祭
- 賀茂祭
- 祇園祭際
- 稲荷祭
伏見稲荷大社の巡幸地域は、現在の京都駅の周辺付近になります。
5基の神輿がそれぞれ異なるルートを巡幸します。
巡幸を終えたお神輿は、伏見稲荷大社に還るのではなく、再び御旅所に還ってきます。
すなわち巡幸ルートは「御旅所⇒氏子区域⇒御旅所」と言う形になります。
この氏子祭から還幸祭にかけて見学者の数がもっとも多く、もっとも混雑します。
そして、氏子祭・還幸祭の大きな見どころが「露店(屋台)」です。
御旅所の周辺・付近に、たくさんの屋台が立ち並び、さらに賑わいをみせます。
氏子祭・還幸祭は、ちょうどゴールデンウィークと重なることもあり、例年、混雑必須のお祭りです。
伏見稲荷大社「還幸祭」
還幸祭では、いよいよ神様を伏見稲荷大社のお社へお還しする祭事です。
しかし、御旅所から直接、伏見稲荷大社にお還りいただくのではなく、まずは京都駅付近の「東寺(とうじ)」へ、神様をお乗しせた5基の神輿が向かいます。
東寺では、僧侶から神様への「神饌(しんせん/供え物)」の奉納があります。
この儀式のあと、再び伏見稲荷大社までの道のりを、お還り巡幸をされます。
最後に、神様の分霊をお載せした、5基の神輿(トラック)が伏見稲荷大社の境内へ到着します。
伏見稲荷大社「後宮祭」
後宮祭は5月4日の午前10時頃から本殿にて執り行われます。
後宮祭では、稲荷大神に稲荷祭が無事に終了したことをご報告し、神様をもとの各・お社へお戻しする祭事です。
そして、後宮祭をもって稲荷祭は完全な終了となります。
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