伏見稲荷大社・五社相殿【重要文化財】
創建年
- 1694年(元禄7年/江戸時代)
建築様式(造り)
- 五間社見世棚造り
- 平入り
屋根の造り
- 檜皮葺(ひわだぶき/ヒノキ)
御祭神
- 応神天皇
- 大山咋神
- 若王子大神
- 須佐之男命
- 事代主神
社格
- 伏見稲荷大社・末社
五社相殿の読み方
五社相殿は「ごしゃあいどの」と読みます。
相殿とは、1つの社殿で5柱の神さまがお祀りされているという意味合いがあります。
五社相殿の歴史・由緒
五社相殿は1694年(元禄7年/江戸時代)に現在の場所に付近の5柱の神を集合させて相殿という形式で創建された社殿になります。
すなわち、かつて稲荷山および付近に鎮座していた以下の5社を合祀しています。
- 蛭子社:事代主神(ことしろぬしのかみ)
- 猛尾社:須佐之男大神(すさのおのおおかみ)
- 若王子社:若王子大神(じゃくおうじのおおかみ)
- 日吉社:大山咋神(おおやまくいのかみ)
- 八幡宮社:応神天皇(おうじんてんのう)
なお、伏見稲荷大社では1694年(元禄7年)に現在の楼門および本殿周辺の宮域が拡張され、このときに同時にいくつかの社殿が造営されています。代表例を挙げれば、現在の楼門はこのときに移築される形で再建されたものであり、そのうちの1つがこの五社相殿社ということになります。
おそらく社頭拡張を好機とし、稲荷山の廃れていた社や、稲荷山ふもとに現存していた社などを移築する形で合祀したものと思われます。
ちなみにこの五社相殿は、隣り合う以下の3社とともに「上末社(かみまっしゃ)」と呼ばれています。
- 長者社
- 荷田社
- 両宮社
- 五社相殿
五社相殿の御祭神
蛭子社
御祭神の事代主神は商売繁昌の神さまです。出雲大社の主祭神「大国主大神」の息子神になります。
- ご利益:商売繁昌
- 例祭:4月7日・午前10時
猛尾社
御祭神の須佐之男命は疫病を司る神さまとして知られています。京都八坂神社(かつての祇園社)の主祭神であり、祇園祭の主祭神としても有名です。ご利益は厄災避けです。
- ご利益:厄災避け、悪魔退散
- 例祭:4月7日・午前10時
若王子社
若王子とは、紀伊(和歌山)にある熊野の神を指します。若王子と書いて「にゃこうじ」とも読まれます。平安後期に一時的に熊野信仰から派生して王子信仰なる信仰が誕生しています。
王子信仰では熊野の12柱の神のうち、5柱の神を特定して「王子」として崇める信仰が根付き、その中の1柱に若王子という神がいます。その姿は「若王子」と言うだけあって少年少女の姿をした神だと云われます。
稲荷大社境内には他に熊野社があるように、熊野の信仰がこの伏見稲荷にも波及し、影響を及ぼしていたと考えることができます。
なお、平安時代、熊野へ詣でれば極楽浄土へ行けると信仰され、この信仰は庶民層ならず貴族や皇族にまで浸透したようです。そんなこともあり、平安末期に後白河法皇が京都白川の地に熊野の神を勧請し、若王子神社として祭祀したものが伝播したものだとも考えられています。
- ご利益:苦難消除・進学成就・縁結び
- 例祭:4月7日・午前10時
日吉社
日吉社は滋賀県大津市坂本にある「日吉大社」の御分神を祀った神様です。山王信仰らしく山の神「大山咋神(おおやまくいのかみ)」を祭祀しています。
大山咋神は台密(天台密教)の守護神としても位置付けられ、比叡山の守護神としても崇拝されています。
太閤秀吉が深く信仰したとも云われます。
- ご利益:一家安泰・一家興隆・厄除け
- 例祭:4月14日・午前10時
八幡宮社
八幡宮は「八幡」の名前が示すとおり、八幡神を祀った社です。八幡神は「応神天皇(おうじんてんのう)」のこととされ、今日に至っても篤い崇敬が寄せらています。応神天皇という皇祖神を祀ることから他の神々とは別格視されている節はありますが、天照大御神より1つ格下の神として位置付けられています。
- ご利益:勝運上昇・出世開運
- 例祭:9月15日・午前10時
五社相殿の建築様式(造り)
五間社見世棚造り
「五間」とは社殿を正面から見て間口が5つある社殿ことです。実際に5つあるのが確認できます。すなわち、それぞれの間口に1柱の神が祀られていることになります。
見世棚とは商品売る時に商品を並べるための棚のことで、これを神前として応用したものが見世棚造りになります。詳しくは御神体が祀られる「殿」の部分より前方に地面から井桁状に台を組み、その上に板を挟み込んで見世棚状に仕立て上げ、お供え物を供するための神前とした造りになります。
見世棚造りは小規模なミニ社殿に用いられることが多く、このような横幅のある社殿に用いらるケースは稀です。伏見稲荷大社ならではと言えます。
五社相殿の場所(地図)
- 本殿から徒歩約1分