京都 伏見稲荷大社「権殿」【重要文化財】
創建年
- 不明
- 推定:1468年(応仁2年)12月以前
再建年
- 1636年(寛永13年/江戸時代初頭)2月
- 1959年(昭和34年)※移築
建築様式(造り)
- 五間社流造
屋根の造り
- 檜皮葺
重要文化財指定年月日
- 2014年(平成26年)1月27日
「権殿」の読み方
権殿は「ごんでん」と読みます。
京都 伏見稲荷大社・権殿の歴史・由緒
この権殿は1635年(江戸時代)に建造が開始され、1636年2月に完成した殿舎となります。
ただし、正式には前身となる殿舎が存在したようなので再建という位置付けになります。
1635年といえば幕府における参勤交代が制定された年であり、1635年以降の参勤交代の途上、西国大名たちは伏見稲荷大社へ社参し、故郷に残してきた家族の安全や、一家の隆栄や繁栄を祈願したものと思われます。
現に伏見稲荷大社の表参道入口にある「玉家(たまや)」という料亭は、参勤交代の折、西国大名がよく立ち寄った「立場茶屋(お茶処)」として人気を博したそうです。
⬆️天気予報を散々見て洗濯物を干して出かけたが、30分せんうちにドシャ降りの大雨が降ってきよったコレどなぃしまんねん状態ほど噂の‥‥「玉家」
今でもその名残として、お店には「大名弁当(3300円)」なる超豪華メニューも存在します。
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「明応遷宮記録」の記述に見られる権殿の創建年
伏見稲荷大社に残された稀少な史料の一つである「明応遷宮記録」によると、1468年(応仁二年/室町時代)3月に稲荷山の社殿、および現在の本殿がある麓の宮域が応仁の乱により灰燼(かいじん)に帰し、同年12月、まず、御仮殿が建てられて御神体を安置したとある。
すなわち、少なくとも1468年(応仁2年)12月にはどんな形状にしろ、御仮殿となる社殿が存在したことになります。
伏見稲荷大社境内は応仁の乱により焼亡した
伏見稲荷大社は応仁の乱によって創建からの記録が記された史料が焼失しており、現在では社外に残された史料に部分的に記録されていたり、1492年以降に当社の禰宜(ねぎ)が書き記した史料が現存しているのみとなります。
なお、現在見ることのできる権殿の姿は1959年(昭和三十四年)に移建されたものになります。
京都 伏見稲荷大社・権殿の建築様式・造り
正面の蟇股の形状や繊細な彫刻は、安土桃山時代〜江戸時代を象徴する繊細かつ見事なまでの極彩色で彩られた蟇股(かえるまた)です。
⬆️繊細な彫刻が施された権殿の吊り灯籠。装飾が見事。これだけでも1、2万円?=崇敬心。
屋根には千木・置千木、鰹木なく、棟の両端に鬼板が据えられているのみです。屋根は檜皮(ひわだ)で葺かれ、流造(ながれづくり)が用いられています。
「流造り」とは「殿」の部分を中心として、屋根が「への字」型に大きく湾曲を画きながら、前方へ向けて大きく突き出たような形状の造りのことです。神社建築ではよく見かける造りです。
五間社流造とは?
「五間社流造(ごけんしゃながれづくり)」とは、正面から見て5つの間口、すなわち柱と柱の空間が5つ存在し、横幅が約10mほどある流造りの社殿のことを指します。
まとめると「への字型の屋根」を持ち、「横幅が広い社殿」のことです。
ちなみに、この権殿は伏見稲荷大社・本殿と造りが類似しており、本殿を一回りほど縮小したサイズで造営されています。(社伝によると約7割の大きさらしい)
通常、一般の参拝者は本殿の手前の「内拝殿」で手を合わせてお祈りするので、本殿を間近で見る機会がないと思われますが、本殿の建築様式を間近で見たい方は是非!この権殿に参拝してじっくりと見学してみてください。
権殿の役割り
権殿は、本殿の修造(修理)の際、一時的に御神体をお遷しする「仮の社殿(仮殿/かりどの)」のことです。
このような権殿や仮殿は、伏見稲荷大社だけに存在する殿舎ではなく、全国のそれなりの規模の神社であれば、境内で見かけることができます。
例えば、同じ京都に位置する「上賀茂神社(賀茂別雷神社/京都府京都市)」では権殿、日光東照宮(栃木)では仮殿を見かけることができます。
ただ、仮殿は目的が済めば取り壊されたり、島根県出雲大社のように待合室(休憩所)などの他の目的で利用される例が散見されますが、仮殿を常時、境内に所有する神社はこの伏見稲荷大社を入れても稀少。
割合、大規模かつ境内面積が広ぃ神社ほど仮殿を常設所有している傾向がみられます。
また、一時的とは言えど、本殿と同義として扱われるため、本殿に準じた造りと、社殿内の調度品なども本殿と類似したものが置かれています。
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